誕生

ブラックホールは物質の進化のある枝の一端を成していると言ってもよい。ビッグバンにより始まった純粋なエネルギーであった宇宙が、やがて素粒子を生み出し、素粒子が結合して原子となる。宇宙初期には水素やヘリウムといった最も軽い元素が作られたと考えられている。
軽元素からなる雲は重力によって収縮し、中心部の圧力と温度が上昇して核融合が始まり、原始星となる。核融合が始まると熱的な膨張力が発生して重力による収縮に拮抗する効果を生む。熱による膨張と重力による収縮がつりあった時点で星は安定する。また、核融合によって放出される光子は星の表面から放出され、星は主系列星として明るく輝き始める。
恒星が核融合で水素を使い果たして主系列星の時代を終えると星は次の段階に変化する。主系列星の後にどのような過程を経るかは星の質量によって違ってくる。
質量が太陽程度から太陽の数倍までの星の場合には、主系列星の後に赤色巨星の段階を経て、星の外層部分を恒星風として周囲に放出して惑星状星雲を作る。星の中心部分は核融合でできた炭素・窒素・酸素などの元素からなる白色矮星となり、このまま次第に冷却して一生を終える。
質量が太陽の約8倍よりも重い星の場合は、巨星に進化した後も中心部で核融合によって次々に重い元素ができ、最終的に鉄からなる中心核が作られる。鉄の原子核は結合エネルギーが最も大きいため、これ以上の核融合反応は起こらず、星の中心部は熱源を失って重力収縮する。収縮が進むと鉄の原子核同士が重なり始め、陽子と電子が結合して中性子になって、やがては星の中心部がほとんど中性子だけからなる核となる。この段階では核全体が中性子の縮退圧によって支えられるようになるため、重力収縮によって核に降り積もる物質は激しく跳ね返されて衝撃波が発生し、一気に吹き飛ばされる。これが超新星爆発である。超新星爆発の後には中性子からなる核が中性子星として残される。残った中性子星が光やX線を激しく放出するパルサーとなる場合もある。
質量が太陽の約30倍以上ある星の場合には、自己重力が中性子の核の縮退圧を凌駕するため、超新星爆発の後も核が収縮(重力崩壊)を続ける。この段階ではもはや星の収縮を押しとどめるものは何も無いため、重力崩壊はどこまでも進む。こうしてシュバルツシルト面より小さく収縮した天体がブラックホールである。